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「千寿揚げ」
東京・北千住
 企業秘密をばらすのもなんですが、このコラムのネタ探しのひとつの方法として、思いついた”なぞ食的なネーム”をインターネットに打ち込んで検索してみることがある。たとえば、深川丼や品川丼があるなら千住丼なんてのはないだろうか・・・・・・・・という感じで調べるのだ。と、今回千住丼は見当たらなかったが、千住揚げってのがヒットした。北千住駅前の「千住の永見」という店のメニューで、お店もHPを立ち上げている。三社祭でみこしを担ぐ老店主の写真があって、「へいらっしゃい!酒飲め、酒飲めー」なんて威勢のいい声が流れる。これは面白い店に違いない。
 通常は昼どきに訪ねるのだが、ここは居酒屋なので開店は三時半。久しぶりに千住の町歩きを楽しんで、日が傾きかけた4時近くに店へ入った。長机がいくつか並んだ、いかにも下町の気さくな酒場、といった雰囲気である。土曜ということもあるのか、帽子にジャンパー姿の中年客が、もうこの時間からビールや酎ハイをやっている。こんな環境でただ千住揚げだけ注文するわけにはいかない。ちょっと早いが、僕も生ビールを一杯もらうことにした。
 ちなみに千住揚げ、店の品書きをよく見ると、字をもじって「千寿揚げ」となっている。(にんにく入り)と但しが付いたのもあったので、ふつうのと両方注文した。すきっ腹のビールで、ちょっといい気分になった頃、皿に3枚ずつ盛られた千寿揚げが運ばれてきた。
 早い話、魚のすり身を使った揚げ天だが、タマネギがたっぷり入っていて、”にんにく入り”のほうにはニンニクとニラの刻みがこれに加わる。すべて手作りらしく、ホワホワな食感が申し分なかった。
 お祭り好きの老店主は自ら千住の町を七福神を調べあげて、「千住七福神」の名のもと、町おこしを推進している。千寿揚げは、それにちなんで考案された名物らしい。   
(コラムニスト。イラストも)